PMP (Project Management Professional)は、プロジェクトマネジメントの国際資格として世界的に認知されています。技術職やプロジェクトマネージャー向けの資格という印象を持たれがちですが、実はIT営業職にとっても非常に大きな価値をもたらす資格です。
クライアントとのやり取りや提案活動の中で、プロジェクト全体を理解し、QCD(品質・コスト・納期)を意識したマネジメント視点を持つことで、より高い信頼と成果につなげることができます。特に複数部門との連携や海外チーム(オフショア開発)とのやり取りが発生する現場では、共通言語として「プロジェクトマネジメントの考え方」が必要です。
本記事では、PMPに英語で挑戦し、一発合格した体験をもとに、勉強法・教材・当日の戦略などを詳しく紹介します。これからPMP試験に挑戦される方にとって、この体験が少しでも励みやヒントになれば幸いです。

PMPとは?営業職にもおすすめできる理由
PMP (Project Management Professional)は、PMI(プロジェクトマネジメント協会)が認定する国際的に認知度の高いプロジェクトマネジメント資格です。
PMP® とは、PMI 本部が認定しているプロジェクトマネジメントに関する国際資格です。
PMP® 試験は、受験者のプロジェクトマネジメントに関する経験、教育、知識を測り、プロフェッショナルとしての確認を目的として実施されます。
専門知識を有していることを証明するために、米国PMI本部が資格認定を行うものであり、法的な資格、免許ではありません。PMP® 資格は、プロジェクトマネジメントに関する資格のデファクト・スタンダードとして広く認知されており、プロジェクトマネジメント・スキルの評価基準として、IT・建設をはじめとする多くの業界から注目されています。
出典:PMP®資格について https://www.pmi-japan.org/pmp_license/pmp/
PMP資格では、納期や予算といった制約の中でプロジェクトを計画どおりに遂行し、成功に導くための考え方や手法を体系的に学ぶことができます。人的リソースの最適化や、進捗・品質・コスト(QCD)のバランス管理など、実務に直結する知識が網羅されています。そのため、PMPはエンジニアだけでなく、営業職・プロジェクトマネージャー・コンサルタントなど、職種を問わず幅広く活用できる資格として注目されています。
実際、PMP試験で問われる内容は、スケジュール管理・リスク管理・コミュニケーション・ステークホルダーとの調整など、プロジェクト推進に直結する知識と実務スキルが中心です。資格保持者をプロジェクトに参画させることが入札条件にもなっていたりします。
試験概要
- 試験形式:選択式(多肢選択問題)
- 試験時間:230分(約4時間)
- 出題数:180問(内訳:ドメイン別に分かれた問題)
- 合格基準:公式に公開されていないが、おおよそ60〜70%の正答率が必要とされています。
受験要件
PMP試験を受けるためには、PMIが定める条件を満たす必要があります。
- 学歴:学士号または同等の学位
- 実務経験:プロジェクトマネジメント経験(学士号保有者は36ヶ月、学士号未保有者は60ヶ月)
- 公式研修:35時間以上のプロジェクトマネジメント教育
受験したきっかけ
教育業界で数年勤務した後、IT業界に転職して5年になります。私自身はエンジニアではありませんが、コーディネーターとしてウォーターフォール型とアジャイル型、両方の開発プロジェクトに3年間携わりました。現在は営業としてお客様の要求をヒアリングし、プロジェクトを推進するチーム(ベトナムオフショア開発体制)の提案を行っています。
営業としてプロジェクトに関わる中で、もっと体系的にプロジェクトマネジメントを理解したいと感じたことが、PMP受験を決めたきっかけです。また、社内外の関係者とよりスムーズに連携を取るためにも、グローバル標準の知識を身につけたいと思いました。
受験の計画
英語の壁
今回の挑戦は、あえて英語でPMP試験を受験することでした。というのも、PMP試験の申し込みや手続きは基本的に英語で行われることが多く、日本語訳に関する対策記事などを読む中で、日本語も英語も母国語ではない自分にとってはかなりハードルが高そうだと感じたからです。「いつか英語を克服したい」という思いもあり、このタイミングで挑戦することを決めました。2024年2月にTOEIC850点を取得しましたが、初めて英語での受験に対しては不安がありました。
合格までのスケジュール
本格的に勉強を始めたのは2024年9月。2025年2月に合格したので、約6か月の準備期間がありました。
当初は2025年1月末の受験を目指して勉強を進めていましたが、英語受験の場合は試験会場での受験のみとなるため、希望日に空きがなく、実際には2月末の受験となりました。英語での受験を考えている方は、早めに試験会場の予約をしておくことをおすすめします。
具体的にはこんな感じでした。
・最初の2か月間(9月〜10月)で参考書や動画講座を活用してインプットを集中的に行いました。
・残りの4か月間(11月〜2月)は模擬試験と復習を繰り返しながらアウトプットと定着を意識した学習
また、学習の記録にはStudy Plusアプリを活用し、日々の学習時間を可視化することでモチベーションを維持しました。自主学習に加えて勉強会にも参加し、トータルで約200時間の学習時間を確保しました。振り返ってみると、地道な積み重ねと計画的なアウトプットのバランスが合格へのカギだったと感じています。
学習に利用した教材とツール
PMPの試験勉強には多くのリソースがありますが、自分に合ったものを選ぶことが大切だと感じました。ここでは、私が実際に使用して役立った教材やツールを紹介します。
PMP試験概要(ECO)
試験範囲を正しく把握することは、効果的な学習の第一歩です。PMIが公式に提供しているPMP Examination Content Outline (ECO)を活用し、どの領域が問われるかを最初にしっかりと確認しました。出題比率やタスクごとの内容が明示されているため、全体像をつかむのに非常に有効でした。
Udemy
PMPの申請には35時間の公式研修(35 PDUs)の受講が必要です。私はこの要件を満たすため、Udemyの講座で学習することにしました。Udemyのセールを活用し、下記のコースを1,530円で受講することができました…!
The Ultimate Project Management PMP Prep Course (35 PDUs)
おすすめ書籍(英語難易度順)
主に英語の書籍を使ってインプットしました。以下に紹介する書籍は、英語の難易度順に並べています。
2. A Project Manager’s Book of Forms(第3版・テンプレート集)
4. PMBOK® Guide
(1)は2018年に出版されたもので少し古いですが、英語がやさしく読みやすいため、英語に自信がない段階の方にもおすすめです。(2)〜(4)は、PMIのメンバーであれば無料でダウンロード可能です。そのため、早めに会員登録しておくことをおすすめします。中でも特に参考になったのは、(2)A Project Manager’s Book of Formsです。実務にそのまま使える具体的なフォームが豊富にあり、理解の助けになりました。
Youtube
YouTubeも補助教材として活用しました。特に英語の動画は、PMBOK第6版のプロセスを理解する上で非常に参考になりました。視覚的な説明により、用語や流れのイメージがつかみやすく、テキストだけでは理解しづらい部分を補ってくれました。
一方、日本語の動画は、PMP試験における出題傾向や「PMIイズム」ともいえる考え方の理解に非常に役立ちました。
模擬試験対策はPMI Study Hall一択
PMI Study Hall は、PMI公式が提供する模擬試験ツールであり、信頼性が高く、おすすめできる教材です。サブスクリプション形式で3か月間の利用が可能で、練習問題とフル模擬試験の両方が含まれています。Plusという上位版もありますが、私にとってはEssentialsで十分だと感じました。また、書籍をすべて読み終えてから模擬試験を行うよりも、並行して実施することで理解が深まり、知識の定着にもつながりました。
私はこのツールで、フル試験(Full Exam)を2回分、ミニ試験(Mini Quiz)を15回分、それぞれ1回ずつ解き、その後に2回ほど復習も行いました。特にフル試験にはExpertレベルの難易度が含まれており、実際の本番試験以上に難しく感じる問題もありました。フル試験のスコアは、1回目が70.29%、2回目が78%でした。合格の目安と言われる70%を超える結果を出せたことで、自信にもつながりました。
PMI Study Hall についてはこちら
生成AIと一緒に勉強!ChatGPTとPMI Infinityの活用
試験勉強の初期は主にChatGPTを活用して、わからない用語やプロセスの意味を調べたり、間違えた問題の解説を確認したりしていました。その後、PMIのメンバー登録をしてからは、PMI Infinity™ に切り替えました。こちらはPMP試験に特化した内容に事前学習されているため、試験対策として非常に有効でした。
さらに、PMI Infinity™ の大きなメリットは、PMIが提供する資料やガイドラインに基づいた情報を確認できる点です。この信頼性の高さにより、ChatGPTよりも正確かつ効果的に学習を進められる場面が多く感じました。
PMP 試験の申請方法と英語での入力と注意点
PMP試験を受けるには、PMI(Project Management Institute)へのオンライン申請が必要です。 この申請はすべて英語で行われ、学歴や実務経験、研修受講歴などを細かく入力する必要があります。初めて申請する場合、特に英語での記入に不安を感じる方も多いでしょう。
以下は、私が実際に行ったPMP申請のステップと、AIツール(ChatGPT)を活用して申請をスムーズに進めた体験談です。
1.PMI公式サイトにアカウント登録
2.受験者情報の入力
最終学歴、学位取得年、所属企業名、職務内容などを入力します。
3.35時間以上のプロジェクトマネジメント研修の入力
Udemyなどで受講したオンライン講座でもOK。英語で講座名・提供元・受講日を記入します。
4.プロジェクトマネジメント経験の入力(36か月分)
所属したプロジェクト名、期間、担当フェーズ、成果や工夫などを英語で記載します。
私はこの実務経験の記載において、3つのプロジェクトを組み合わせて36か月分をカバーしました。
PMP申請では、プロジェクトごとの経験を英語で200〜300語程度にまとめて記載する必要があります。特に英語での文章作成に不安がある方にとっては、ハードルの高い作業かもしれません。ChatGPTを活用して英文の要約や文法チェックを行いました。自分の書いたドラフトを英語で添削してもらい、より読みやすく、正確な表現に整えることができました。
※監査(Audit)の可能性について
PMIでは申請者の一部をランダムで監査(Audit)する仕組みがあります。監査対象になると、職務経歴を証明する書類や推薦者(上司や上級管理職)の署名が求められるため、準備に時間がかかる可能性があります。
私は今回、監査には選ばれませんでしたが、万が一選ばれても落ち着いて対応できるよう、入力内容はできる限り正確・丁寧にまとめておくことが大切です。
試験にかかった費用
受験料に加えて、教材費も一定の投資が必要です。教材や試験費用を含めると、トータルで10万円を超える出費となり、強い覚悟を持って取り組むモチベーションにもつながりました。
項目 | 費用(USD) | 費用(円) |
---|---|---|
PMIメンバー登録費 | $139 | 約21,233円 |
試験費用 | $405 | 約64,130円 |
Udemy講座費用 | $11 | 約1,530円 |
PMI Study Hall Essentials | $49 | 約8,379円 |
Head First PMP(第4版)書籍代 | $68 | 約10,400円 |
勉強会 | $125 | 約18,000円 |
合計 | $797 | 約123,672円 |
試験本番で意識した時間配分とトラブル対策
時間配分と戦略
PMP試験では、180問を230分(約4時間)で解答する必要があります。単純計算で1問あたり約76秒ですが、本番では集中力の維持や問題の難易度に応じた時間調整が求められます。
私が実際に取り組んだ時間配分の例を紹介します。
セクション | 問題数 | 配分時間 | 備考 |
---|---|---|---|
第1セクション | 60問 | 70分 | 難しいとされるパート、時間に余裕を持たせる |
休憩 | 10分 | ||
第2セクション | 60問 | 60分 | |
休憩 | 10分 | ||
第3セクション | 60問 | 60分 |
この配分だと、合計210分となり、20分の予備時間を確保できます。実際、本番では序盤に戸惑う問題が続き、計画どおりに進まない場面もありましたが、最後まで焦らず対応できたのはこの余裕があったからです。
本番での予想外のトラブル
万全の準備をして臨んでも、本番には思わぬトラブルがつきものです。私自身、試験中に焦った出来事がありました。
なんと、試験中に2回もペンのインクが出なくなるというトラブルが発生しました。メモ用紙に時間配分を書いたり、考えを整理したりする場面で、突然ペンが使えなくなるのは想像以上に焦ります。すぐに手を挙げて試験官に交換をお願いしたものの、思考が一時中断されてしまい、ペースを取り戻すのに少し時間がかかりました。
事前にできる対策
- 配布される備品に問題があれば、すぐに試験官に伝えること
- 試験開始前に必ずペンのインクが出るかチェックすること
- 焦らないメンタルトレーニングも大事!
試験は想定外のことが起きても慌てない心構えがとても大切だと痛感しました。
資格を取得して得られたこと
PMP試験の勉強を通じて、まず大きく感じたのは、知識の整理ができたことです。これまで実務の中で何となく行っていたことや感覚的に理解していた部分が、理論やプロセスとして体系的に結びつき、より明確な理解につながりました。
また、学んだ知識は実務でもさっそく活用できています。特に社内外のステークホルダーとのコミュニケーションや、プロジェクトの進行・報告の場面で、PMPの知識が非常に役立ちました。自信を持って説明や提案ができるようになったことも大きな成果のひとつです。
さらに、自分の弱点にも気づくことができました。理解が浅かった領域や、迷いやすい問題パターンが明確になったことで、今後さらに強化していきたい部分が見えてきました。合格はゴールではなく、新たな成長のスタートだと感じています。
ちなみに、資格取得後はPMPを通じて知り合った方々とお話しする機会も増え、自分の視野が広がったと感じています。これからは、学んだ知識を活かして、お客様の立場に立った提案ができるようさらに経験を積んでいきたいと思います。
おわりに
今回のPMP受験は、英語という自分にとってのハードルを乗り越える挑戦でしたが、それ以上に新しい視点を得る貴重な機会となりました。単なる知識だけでなく、仕事の進め方やチームとの関わり方、自分の成長の方向性にもつながっています。
これから挑戦される方にとって、この体験が少しでも励みやヒントになれば幸いです。
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